Lenovoから登場したThinkPad P14s Gen 5 AMDは、そのパワフルな性能と携帯性のバランスから多くのプロフェッショナルの注目を集めるモバイルワークステーションです。
しかし、購入を検討する上では、その詳細な仕様 スペックはもちろん、心臓部であるCPUの真の実力、グラフィックス性能の限界、そしてメモリ 増設やSSD 増設といった拡張性の実態は、事前にしっかりと把握しておきたいポイントになります。
また、日々の持ち運びに関わる実際の重量 重さや、外出先での作業時間を左右するバッテリーの持ちについても、カタログスペックだけでは見えない真実があります。
本記事では、レビュー記事や実ユーザーの声も参考にしながら、この一台がどのような利用者像に最適なのかを解き明かしていきます。
ThinkPad P14s Gen 5 AMDの性能を徹底分析

- 詳細な仕様/スペック一覧
- 搭載CPUの性能と特徴
- 内蔵グラフィックスの実力
- メモリ増設で性能は向上するのか
- SSD増設の可否と注意点
詳細な仕様/スペック一覧
ThinkPad P14s Gen 5 AMDの購入を検討する上で、まずはその基本となる仕様を正確に把握することが大切です。
このモデルは、CPUやディスプレイ、メモリ容量などを柔軟にカスタマイズできる点が特徴であり、用途に応じた最適な構成を選ぶことが可能です。
以下に、選択可能な詳細仕様を表にまとめました。
項目 | 仕様内容 |
---|---|
発売日 | 2024年5月31日以降、順次発売 1 |
オペレーティングシステム | ・Windows 11 Pro 64bit (日本語版), ・Windows 11 Home 64bit (日本語版), ・Ubuntu Linux, Red Hat Enterprise Linux, Fedora Linux 3 |
プロセッサー (CPU) | AMD Ryzen™ PRO 8040HS シリーズ ・ AMD Ryzen™ 7 PRO 8840HS: 8コア / 16スレッド, ベースクロック 3.3GHz, 最大ブーストクロック 5.1GHz, L2キャッシュ 8MB, L3キャッシュ 16MB 5 ・ AMD Ryzen™ 5 PRO 8640HS: 6コア / 12スレッド, ベースクロック 3.5GHz, 最大ブーストクロック 4.9GHz, L2キャッシュ 6MB, L3キャッシュ 16MB 5 |
NPU (Neural Processing Unit) | AMD Ryzen™ AI 搭載 (最大16 TOPS) 5 |
グラフィックス (GPU) | APU内蔵グラフィックス (CPU統合型) ・ AMD Radeon™ 780M (Ryzen 7 PRO 8840HSに内蔵) 3 ・ AMD Radeon™ 760M (Ryzen 5 PRO 8640HSに内蔵) 5 |
メモリー | 最大容量: 96GB (48GB x2) 5 仕様: PC5-44800 DDR5-5600 SDRAM SODIMM, non-ECC, デュアルチャネル対応 3スロット: DDR5 SO-DIMMスロット x2 (ユーザーによる増設・換装が可能) 5 |
ストレージ | 最大容量: 2TB 5スロット: M.2 2280 PCIe® 4.0 x4 スロット x1 5 種類: M.2 2280 SSD (PCIe NVMe, Gen4), OPAL2.0対応 3 |
ディスプレイ | 画面サイズ: 14.0型アスペクト比: 16:10 3 ・ 2.8K OLED (有機EL): 2880×1800, 400nit, 120Hz, DCI-P3 100%, DisplayHDR™ TrueBlack 500, Dolby Vision®, X-Rite®ファクトリー・カラー・キャリブレーション 2 ・ WUXGA IPS液晶 (タッチ対応): 1920×1200, 500nit, sRGB 100%, ThinkPad® Privacy Guard搭載 4 ・ WUXGA IPS液晶: 1920×1200, 400nit, sRGB 100%, 省電力, ICCテンプレート・カラー・キャリブレーション 4 ・ WUXGA IPS液晶 (タッチ対応): 1920×1200, 400nit, NTSC 45% 4 ・ WUXGA IPS液晶: 1920×1200, 400nit, NTSC 45% 3 |
ポートとコネクタ | ・ USB-C (Thunderbolt™ 4 / USB4® 40Gbps, PD 3.0, DisplayPort™ 1.4) x2 5 ・ USB-A (USB 5Gbps / USB 3.2 Gen 1) x2 (うち1つはPowered USB) 5 ・ HDMI 2.1 (最大4K/60Hz) 5 ・ イーサネットコネクター (RJ-45) 5 ・ マイクロホン/ヘッドホン・コンボ・ジャック (3.5mm) 5 ・ セキュリティキーホール (Kensington® Nano Security Slot™) 5 ・ オプション: スマートカードリーダー, Nano-SIMカードスロット 5 |
ワイヤレス通信 | WLAN + Bluetooth: Qualcomm® Wi-Fi® 6E NFA725A (802.11ax 2×2) + Bluetooth® 5.3 3 WWAN (オプション): 4G LTE (Quectel EM160R-GL) / 5G Sub-6 GHz (Quectel RM520N-GL) 対応可能 5 |
カメラ | 標準/オプション:・ 5.0MP RGB + IR (赤外線) カメラ (プライバシーシャッター、顔認証、人感検知機能付き) 5 ・ 5.0MP RGB カメラ (プライバシーシャッター付き) 5 |
オーディオ | スピーカー: ステレオスピーカー (2W x2), Dolby Audio™ 対応 5マイク: デュアルアレイマイクロホン (360°遠距離対応), Dolby Voice® 対応 5 |
キーボード | 日本語配列, バックライト付き/なしを選択可能, キーピッチ 19.05mm, キーストローク 1.5mm, TrackPoint®搭載 3 |
セキュリティー | チップ: dTPM 2.0 4生体認証: 電源ボタン一体型指紋センサー (Match-on-Chip), IRカメラによる顔認証 (オプション) 2その他: ThinkShield, カメラプライバシーシャッター, 底面カバータンパー検知 2 |
バッテリー | 種類: 3セル リチウムイオンポリマーバッテリー容量: 39.3Whr または 52.5Whr を選択可能 3駆動時間 (JEITA 3.0): ・ 39.3Whr搭載時: 約10.2時間 (動画再生時) / 約21.62時間 (アイドル時) 2 機能: ラピッドチャージ対応 (1時間で80%充電) 5 |
電源アダプター | 65W USB-C ACアダプター (スリムタイプ/標準タイプ, 2ピン/3ピン) 5 |
本体寸法 (WxDxH) | 315.9 x 223.7 x 17.7 mm 5 |
本体質量 | 約1.31kg~ (構成により変動) 3 |
耐久性 | 米国国防総省調達基準「MIL-STD 810H」に準拠 2 |
ISV認証 | Autodesk®, Adobe®, Siemens®など主要なプロフェッショナル向けアプリケーションの動作認定を取得 3 |
価格帯(標準的な価格の幅) | 約144,000円 ~ 約260,000円超 (構成や販売チャネルにより変動) 1 |
この表から分かるように、本機はプロフェッショナルな要求に応えるための多様な選択肢を提供しています。
特に、ユーザー自身でメモリを交換・増設できるSODIMMスロットの採用や、AMDプラットフォームでありながらThunderbolt 4互換のUSB4ポートを2基も搭載している点は、他の薄型ノートPCと一線を画す大きなアドバンテージと言えます。
搭載CPUの性能と特徴

ThinkPad P14s Gen 5 AMDの性能を語る上で、核となるのがAMD Ryzen PRO 8040HSシリーズのプロセッサーです。
このプロセッサーは、一般的な薄型ノートPCに採用される「U」シリーズとは異なり、より高いTDP(熱設計電力)で動作する「HS」シリーズである点が特徴です。
「HS」シリーズがもたらす持続性能
「HS」シリーズは最大29Wという高いTDPで動作するよう設計されており、これにより、複数のコアを長時間使用するような高負荷なタスクにおいて、高いパフォーマンスを持続的に発揮できます。
例えば、ソフトウェアのコンパイル、3Dレンダリング、大規模なデータセットの処理といった、モバイルワークステーションに求められる専門的な作業で直接的な効果を体感できるでしょう。
各種ベンチマークテストにおいても、Ryzen 5 PRO 8640HS搭載モデルでさえ、一般的なビジネスノートPCを大きく上回るスコアを記録しており、その性能の高さを裏付けています。
AI処理を加速するNPUの役割
このCPUは、専用のAIエンジンであるNPU(Neural Processing Unit)を統合しています。
これは、ビデオ会議での背景ぼかしやノイズ抑制といったAI関連の処理を、CPUやGPUに大きな負荷をかけることなく、低消費電力で実行するためのものです。
現在はまだ対応アプリケーションが限られていますが、WindowsのCopilot機能をはじめ、将来的にAIを活用するソフトウェアが増えるにつれて、このNPUの存在が全体の快適性を左右する重要な要素になると考えられます。
Intel製CPUとの比較
歴史的にThunderboltポートやプロフェッショナル向けソフトウェアの最適化で優位に立っていたIntel製CPUと比較しても、本機が搭載するRyzen PRO 8040HSシリーズは遜色ありません。
マルチコア性能では同世代のIntel Core Ultraプロセッサーとしのぎを削り、かつUSB4ポートの搭載によってI/Oの互換性という弱点を克服しました。
これにより、これまでIntelプラットフォーム一択だったパワーユーザーにとっても、極めて魅力的な選択肢となっています。
内蔵グラフィックスの実力

本機は、CPUに統合されたAMD Radeon 780M(Ryzen 7搭載時)または760M(Ryzen 5搭載時)グラフィックスを利用します。
これらは最新のRDNA 3アーキテクチャを採用しており、従来のCPU内蔵グラフィックスの性能を大きく凌駕します。
この性能向上により、高価でバッテリー消費の大きい専用GPU(dGPU)を搭載せずとも、多くのグラフィックスタスクに対応可能です。具体的には、軽度から中程度の2D/3D CAD作業、Adobe PhotoshopやLightroomでの高解像度写真編集、そして4K動画の再生といったタスクを快適にこなすことができます。
コストとモビリティを重視するユーザーにとって、これは大きなメリットとなります。
ただし、注意点も存在します。内蔵グラフィックスの性能を最大限に引き出すためには、メモリを2枚搭載する「デュアルチャネル」構成が不可欠です。レビュー記事によれば、メモリが1枚の「シングルチャネル」構成の場合、グラフィックス性能が大幅に低下することが報告されています。
したがって、グラフィックス性能を少しでも重視する場合は、購入時に8GBx2枚や16GBx2枚といったデュアルチャネル構成を選択するか、後からメモリを増設することが強く推奨されます。
また、あくまでCPU内蔵グラフィックスであるため、高度な3Dゲームや複雑なビデオエフェクト、大規模なレンダリングといった、極めて高いグラフィックス性能を要求される用途には向いていません。
本機は生産性向上のためのツールであり、ゲーミングPCやハイエンドな映像制作用ワークステーションの代替ではないことを理解しておく必要があります。
メモリ増設で性能は向上するのか

ThinkPad P14s Gen 5 AMDが持つ最大の特徴の一つは、その卓越したメモリ拡張性です。
多くの薄型ノートPCが基板に直接ハンダ付けされたオンボードメモリを採用し、増設が不可能な上に最大容量も32GB程度に制限される中、本機はユーザーがアクセス可能な2つのSODIMMスロットを備えています。
この仕様により、最大で96GB(48GB x 2)という、このクラスのノートPCとしては異例の大容量メモリを搭載できます。これは、特定のユーザー層にとって決定的な意味を持ちます。
メモリ増設が特に有効な用途
例えば、ソフトウェア開発者がWSL (Windows Subsystem for Linux) やDockerといった仮想化・コンテナ技術を多用する場合、メモリは多ければ多いほど快適になります。あるレビュー記事では、64GBのメモリを搭載したことで、以前はメモリ不足に悩まされていたローカル環境での大規模言語モデル(LLM)の実行や複数の開発ツールの同時利用が、ストレスなく行えるようになったと高く評価されています。
同様に、大規模なデータセットを扱うデータサイエンティストや、多数のレイヤーを重ねる高解像度の画像編集、複数のアプリケーションを切り替えながら作業するパワーユーザーにとっても、潤沢なメモリは作業効率の向上に直結します。
デュアルチャネル構成の重要性
前述の通り、メモリを2枚搭載するデュアルチャネル構成にすることで、特に内蔵グラフィックスの性能が大幅に向上します。
システムの全体的な応答性も改善されるため、16GBの容量が必要な場合は8GBメモリを2枚、32GBが必要な場合は16GBメモリを2枚搭載するなど、常に2枚一組で構成することがパフォーマンスを最大限に引き出す鍵となります。この柔軟な増設・換装が可能な点は、将来的なアップグレードを見据える上でも大きな安心材料と言えるでしょう。
SSD増設の可否と注意点
ストレージの拡張性に関しては、メモリとは異なる側面に注意が必要です。
ThinkPad P14s Gen 5 AMDは、高速なデータ転送を実現するM.2 2280 PCIe Gen4 SSDに対応しており、最大で2TBのモデルを選択できます。これにより、OSやアプリケーションの起動、大容量ファイルの読み書きは非常に高速です。
ただし、マザーボード上に搭載されているM.2スロットは1つのみです。このため、後からストレージ容量を増やす場合は、既存のSSDを取り外して、より大容量の新しいSSDに「交換」する必要があり、2台目のSSDを「増設」して容量を追加することはできません。
これは、購入時に将来必要となる容量を慎重に見積もる必要があることを意味します。
例えば、最初は512GBで購入し、後でデータが増えた際に1TBのSSDに換装する場合は、当然ながらOSの再インストールやデータの移行作業が発生します。
クラウドストレージや外付けSSDを併用する方法もありますが、本体内だけでストレージを完結させたいユーザーにとっては、少し物足りない点と感じられるかもしれません。
軽量コンパクトな筐体を実現するための設計上の選択ではありますが、このストレージ拡張性の制約は、本機を検討する上で念頭に置いておくべきポイントの一つです。
ThinkPad P14s Gen 5 AMDの実用性を多角的に評価
- レビュー記事の評価
- 公称値と実測での重量の違い
- 気になるバッテリーの持ち
- 想定される理想の利用者像とは
- 総括:ThinkPad P14s Gen 5 AMDは買いか
レビュー記事の評価

ThinkPad P14s Gen 5 AMDは、発売以来、多くのレビューサイトや実ユーザーによって評価されています。それらの情報を統合すると、本機の客観的な長所と注意点が見えてきます。
共通して高く評価される長所
多くのレビューで共通して称賛されているのは、まずその卓越したパフォーマンスと拡張性の両立です。
特に、薄型軽量の筐体でありながら、ユーザー自身が最大96GBまでメモリを増設できる点は、競合製品にはない大きなアドバンテージとして頻繁に指摘されています。
次に、接続性の高さも大きな評価ポイントです。
2基のUSB4(Thunderbolt 4互換)ポートに加え、USB-A、HDMI、有線LAN(RJ-45)ポートまで標準で搭載しており、ハブやドングルなしで多様な周辺機器に接続できる利便性は、多くのユーザーから支持されています。伝統のThinkPadキーボードの快適な打鍵感や、トラックポイントの操作性も、従来からのファンを納得させる品質を維持しているようです。
指摘される注意点やデメリット
一方で、いくつかの注意点も挙げられています。
最も多く指摘されるのが、SDカードリーダーが搭載されていない点です。写真撮影者やビデオグラファーなど、カメラから直接データを取り込む機会が多いユーザーにとっては、ワークフロー上の明確なマイナスポイントとなります。
また、冷却システムはファン1基、ヒートパイプ1本という構成のため、長時間の連続的な高負荷作業では、熱による性能低下(サーマルスロットリング)が発生する可能性が示唆されています。
これは、本機が短時間で高い性能を発揮する「バースト性能」に優れる一方、持続的なピーク性能を求める用途には限界があることを意味します。
キーボードに関しても、バックライト非搭載モデルはキートップの質感が異なり、打鍵感がやや劣るといった細かい指摘も見られます。
これらの点を総合すると、本機は万人向けの製品ではなく、特定のニーズを持つユーザーに深く刺さるモデルであると言えます。
公称値と実測での重量の違い
モバイルワークステーションを選ぶ上で、本体の重量は携帯性を左右する非常に重要な要素です。ThinkPad P14s Gen 5 AMDの仕様表には、本体質量が「約1.31kg~」と記載されています。
この数値は非常に魅力的ですが、注意が必要です。
この「1.31kg」という数値は、あくまで選択可能なパーツの中で最も軽量な構成(例えば、小容量バッテリー、WWAN非搭載など)を選んだ場合の値です。実際にユーザーが選択するであろう、より実用的な構成では重量が増加します。
複数のレビューサイトやユーザー報告によると、LTEモジュールやスマートカードリーダー、大容量バッテリーなどを搭載したモデルの実測値は、1.4kgから1.5kg弱になるケースが一般的のようです。
例えば、あるレビュー機は1407g、別のユーザーが大容量バッテリーなどを選択したモデルは1473gであったと報告されています。
もちろん、1.4kg台であっても14インチのワークステーションとしては十分に軽量な部類に入りますが、「1.3kgを切る軽さ」を期待して購入すると、実際に手に取った時に「思ったより重い」と感じてしまう可能性があります。
この公称値と実測値の間に存在する数十グラムから百数十グラムの差を事前に認識しておくことが、購入後の満足度を保つためには大切です。
気になるバッテリーの持ち

ノートPCのバッテリー駆動時間は、外出先での生産性を大きく左右します。
ThinkPad P14s Gen 5 AMDは、39.3Whrと52.5Whrという2種類の容量のバッテリーを選択できます。
メーカー公表のJEITA 3.0測定法に基づいた駆動時間は、例えば39.3Whrバッテリー搭載時で動画再生が約10.2時間、アイドル時が約21.62時間とされています。
ただし、実際の使用状況(画面の明るさ、実行するアプリケーション、Wi-Fi接続など)によってバッテリー駆動時間は変動するため、あくまで一つの目安と捉えるべきです。
実用上の駆動時間とPD充電の利便性
複数のレビュー記事によると、一般的なウェブ閲覧やドキュメント作成といった軽作業であれば、一日中の利用も視野に入りますが、CPUに負荷のかかる作業を続けた場合は、数時間でバッテリーを消費することもあるようです。
特に、より大容量の52.5Whrバッテリーを選択すると、駆動時間は延びますが、前述の通り本体重量が増加するというトレードオフの関係にあります。
ここで重要なのは、本機がUSB Power Delivery (PD) 充電に対応している点です。
これにより、専用のACアダプターだけでなく、市販のPD対応モバイルバッテリーやドッキングステーションからも充電が可能です。
外出先で電源が確保できない場面でも、スマートフォン用のモバイルバッテリーで応急的に電力を供給できるため、バッテリー容量そのものよりも、この充電の柔軟性を評価する声が多く聞かれます。
自身の使い方を考慮し、重量と駆動時間のどちらを優先するかでバッテリー容量を選択するのが賢明と言えるでしょう。
想定される理想の利用者像とは

これまでの分析を踏まえると、ThinkPad P14s Gen 5 AMDは、特定のニーズを持つプロフェッショナルにとって、他に代えがたい価値を提供するマシンです。
この製品の理想的な利用者像は、以下の要素の繊細なバランスを求める、高度にモバイルな専門家や開発者と考えられます。
第一に、ソフトウェア開発者やデータサイエンティストです。コンパイル、仮想環境の実行、データ処理など、断続的に高いCPU性能を必要とし、かつ最大96GBまで搭載可能なメモリ拡張性を最大限に活用できるユーザー層には最適です。
第二に、建築家やエンジニアで、外出先で2D/3D CADデータを閲覧・修正する機会が多い方々です。
専用GPUを搭載する大型ワークステーションほどの性能は不要でも、一般的なノートPCでは力不足と感じる場面で、本機の持つバランスの取れた性能が活きます。
第三に、Thunderbolt 4の高速なデータ転送を必要とするパワーユーザーです。
これまで高性能なCPUとThunderboltの両立を求めるとIntel製CPU搭載機しか選択肢がありませんでしたが、本機の登場により、AMDの優れたCPU性能とThunderboltのエコシステムを両立したいというニーズに応えられるようになりました。
逆に、絶対的な最大持続性能を求める映像クリエイターや、1kg前後の究極の軽さを求めるビジネスパーソン、あるいはSDカードスロットが必須の写真撮影者にとっては、他の選択肢の方が適している可能性があります。
本機は、性能と携帯性のトレードオフを理解した上で、そのユニークな強みを自身のワークフローに活かせるユーザーにとって、最高のパートナーとなるでしょう。
総括:ThinkPad P14s Gen 5 AMDは買いか
この記事では、ThinkPad P14s Gen 5 AMDの性能、実用性、そしてどのようなユーザーに最適なのかを多角的に分析してきました。
最後に、本機の重要なポイントをまとめます。
- AMD Ryzen PRO 8040HSシリーズによる高い処理性能
- 特に複数のコアを活用するタスクで強みを発揮
- AI処理を低消費電力で実行するNPUを内蔵
- 最大96GBまで搭載可能な卓越したメモリ拡張性
- ユーザー自身がメモリを交換・増設できる2つのSODIMMスロット
- ソフトウェア開発や仮想化環境で大きなアドバンテージ
- AMDプラットフォームでありながら2基のUSB4ポートを搭載
- Thunderbolt 4互換で高速なデータ転送やeGPU接続に対応
- 有線LANやHDMIなどビジネスに必須のポート類も完備
- CPU内蔵グラフィックスはデュアルチャネルメモリで性能が向上
- SDカードリーダーが非搭載である点は一部ユーザーにとってデメリット
- 公称値の約1.31kgは最軽量構成で実用構成では1.4kg台が目安
- 冷却性能には限界があり長時間の連続高負荷作業には不向き
- USB PD充電対応で外出先での電力確保が容易
- 性能と携帯性の高度なバランスを求めるプロフェッショナルに最適